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最賃を引き上げて!「好きこのんでこんな生活をしているわけではない」審議会で意見陳述

新潟県の最低賃金の改定にかかわる新潟地方最低賃金審議会の第2回目が8月9日、新潟労働局で行われました。

にいがた青年ユニオンは、審議会の冒頭で約10分間、意見陳述を行いました。

ワーキングプアの世帯の生活実態について、「洗濯機が壊れても買い換えられずに手洗いしている」「子どもがお金がないことに気を遣う」など具体例を挙げ、「人生の落とし穴に落ちても、そこからはい上がれるようにして欲しい」と述べました。

同審議会での意見陳述は、これまで新潟では行われておらず、にいがた青年ユニオンはかねてから「ワーキングプアの声の届かない審議となっている」として意見陳述を求めており、それが今回実現しました。

 

意見陳述の要旨は続きで...

 

最低賃金で1か月暮らしてみました。

最低賃金で1か月暮らしてみました。

 

 

(意見陳述の要旨 *無断転載禁*)

新潟県最低賃金の改定に関わって、意見陳述の機会を与えていただきましてお礼申し上げます。

 

にいがた青年ユニオンは、会社に労働組合がない正社員や、パートや派遣などの不安定雇用のため、生活が苦しいといった、労働条件のたいへん低い労働者が自ら運営する労働組合です。そのような組織の性格から、私も本来ならばこの格好でアルバイトをしている時間ですし、医療費は減額制度を利用しています。組合員の中には、生活保護やさまざまな公的扶助を利用している人もいます。

それゆえに、働く人の最底辺を決める最低賃金制度は、自らの労働条件と生活に直接に直結しています。

 

現在の最低賃金は時給689円ですから、フルタイムで働いても月収は12万円ほど、年収は150万円にもなりません。また、仕事をしたいと思っても、生活できる仕事が少ないため、やむを得ず収入が少ないとわかっていても、時間単価が低かったり、労働時間が短かったりするような仕事に就いている人もいます。

 

ここでは、年収が200万円に満たない「ワーキングプア」の場合、どういう生活になるのかを具体的にお話しさせていただきたいと思います。

 

税金と社会保険を除けば、自由に使える金額は月額8―9万円ほどになります。

さらにある程度以上減らせない費用が、住居費や公共料金などです。

これらを差し引いた金額が自由に使える金額です。

本来なら、何かの時のためにわずかずつでも貯蓄もしたいところですが、これが突然の出費に対応できるかどうかは運任せになります。

 

たいがいの仲間は、まず食費を削ります。閉店間際のスーパーで割引されている品物だけを買ってきたり、特売日だけ買い物をします。味や好み、品質で食べ物を選ぶゆとりはなく、安さと量だけがすべてです。

私は1日2食を基本にします。かつて職場で「お昼ご飯を食べずに大丈夫なのか」と声を掛けられました。大丈夫かどうかはわかりませんが、そうしなければいけないのです。もともとお昼ご飯を食べないものだからとごまかしてはいましたが、いぶかしがられました。かといって、給料が安いからお昼ご飯を食べられないとも言えないでしょう。だから、もともと食べないことにするのです。

他にも、私は冷蔵庫を使いません。これは食べる分量だけ買ってきてロスを減らすということと、電気代を節約するという方法です。

別の人は、一気に作っておいてタッパに入れて冷蔵庫に入れておきます。ですから冷蔵庫の中は食材ではなくタッパでしめられるわけですが、これはガス代の節約と家事にかける時間の節約です。生活保護を利用している高齢者や母子家庭で採られる方法です。

 

政府からは望ましい食生活として「食事バランスガイド」が出されています。しかし、今のようなことをやれば、それを実行することはとてもムリです。

 

日用品も、特売日にまとめ買いをします。服は、10年、20年前に買ったものを着続けています。よほど困らなければ買いません。

私はたとえ靴下に穴が開いても、それを縫って履いています。たかが数百円でも、毎日その積み重ねをしています。

 

暦の上では秋だそうですが、暑い日が続いています。しかし、たいがいの仲間の家にはエアコンがない、あるいは電気代が気になってエアコンは使わないと言います。熱中症に注意、クーラーは適度に使用してくださいというニュースが流れていましたが、それはワーキングプアには無意味な忠告です。

逆に、冬の暖房代をおさえるために部屋の温度設定を10度にしている、こたつだけで過ごしている、洗い物は冷たいけれども水を使うといった生活となります。

 

休みの日は外出せず、家にいるようにします。当然、人付き合いも減ります。

突然の冠婚葬祭が本当に大変な出費です。私は、知人の親類の葬儀の時、香典を持っていくことができず、お通夜の始まる前に手を拝ませてもらうだけで失礼させてもらったことがあります。

社会教育をテーマにしている大学生から、社会教育との関わりについて尋ねられたことがありますが、そんな時間も金銭的余裕もありません。

 

家電が壊れるなどの突然の出費も大変です。

洗濯機が壊れたけれども買い換えるお金がなく、手洗いしているという仲間がいます。

私は先日、新々バイパス上で車のエンジンがかからなくなりました。牽引してもらい、修理してもらいました。1万円ほどですみましたが、こういう突然の出費はいつやってくるか、連続してやってくるか、まったくわかりません。1000万円も貯蓄があればなんてことはないでしょう。ですが、そんな貯蓄はないのです。こつこつ貯めた何かの時の貯蓄があったとしても、そのとき生活が回るかどうかは運任せの金額にしかなっていません。

 

病気になっても病院には行きません。我慢して仕事に行きます。

仕事に行くのは、医療費がいくらかかるかわからない、事前に見積もりが出せないというのと、休めばその分収入が減る二重苦だからです。たいがいは、何かあったらドラッグストアで薬を買って処置します。理由は、時間もとらず、あらかじめ値札がついているからです。

私は、左手を5針縫うけがをしました。そのときはやむを得ず病院に行きましたが、その後の処置は病院に行かず、最後の抜糸も病院に行かずに、自分で糸を取り除きました。

 

精神的に病んでしまうこともあります。

にいがた青年ユニオンには、「もう死にたい」といった相談がたくさん来ます。生活苦、就職難、そこから生じる人間関係の悪化などが原因です。

労働側委員のみなさんの中に、クレサラ問題などにかかわったことがあれば、おわかりかと思います。

ずっと、お金のことを考えています。貯蓄ができればいいのですが、冒頭に申し上げたように貯蓄がほとんどできないのです。突然の出費があると、生活費が足りず、カードローンに手を出してしまって返済で悩む人もいます。学校に通ったときの奨学金が返せないという相談もたくさん来ます。こうやって精神的に追い詰められていきます。結果、自己破産する人もいます。

こうして、仕事、生活、体調不良のすべてに問題を抱えて、解決が困難になっていきます。

 

子どもを育てることができません。

非正規労働者どうしの夫婦は、子どもが産めないと言っています。もしも妊娠したとわかったら職場でいじめられるかもしれません。マタニティーハラスメントというそうですが、もちろん、そのことは間違っています。ですが、それが現実です。産休のとき生活を維持できませんし、その後も復職できるとは限りません。その後の教育費も考えれば、躊躇します。

所得の少ない夫婦で子どもがいる場合は、たいがい、祖父母と同居しています。祖父母の年金をあてにしていたり、子育ての担い手になっているのです。つまり、祖父母と一緒に暮らしていない夫婦なら、子どもを持つことができなくなるのです。

 

子どもがお金のことで気を遣うことは、とても切ないことです。

生活保護を利用しなくてはならなくなった夫婦が言っていました。生活保護を利用し始めるその直前には、子どもから「おなかがすいた」という言葉すらなくなっていました。子どもは我慢しています。高校を卒業して進学できるような子どもでも、「お金がないから」と進学を諦めることもあります。

私の子どもも、親にお金がないことに気を遣わせないように振る舞うことが切なくて仕方がありません。きっと、これが欲しいのだろうに、ぐっとがまんしていたり、何も言わず安いものを選んだりするのです。

子どもは、家庭が貧しいということをよく知っています。そして、そのことで親が悩んでいることをよく知っています。だから、自分のできることを一生懸命に考え、実行しようとするのです。

こんな親の元に生まれてこなければ、私の子どもはもっと幸せだったかもと考えることもあります。だから、子どもの教育費を第一に貯蓄して、子どもの苦しさを出来る限りなんとかしたいと、1分1秒切れ目なく、ずっと考え続けています。

 

誰もが好きこのんで、こんな生活を選んでいるわけではありません。

 

いわゆるブラック企業で辞めなくてはならなくなった、病気をして辞めなくてはならなくなった、好条件だったから転職したら契約内容と現実が違ったなど、いろいろな人生の「落とし穴」があったのです。

そして、生活を維持するため、条件が悪くても手近でご縁のあった仕事に就くことになったのです。

ですから、手近にある仕事が、人としてまともな生活のできる条件であってもらわなければ困るのです。

 

少々長くなったかもしれませんが、統計上の数値では出てきにくい「落とし穴」に落ちている人たちの生活について、私のことも含めて、お話しさせていただきました。

もっと苦しんでいる人は、たくさんいるはずです。それは企業家であっても同じです。かつて、ようやく自分の店を持つことができ、夢が叶ったのだけれども、身体をこわしてしまったという経営者から相談をいただいたことがあります。

労働者だから、経営者だからというわけではなく、ぜひ、こういう数字に出てこない、人生の「落とし穴」に落ちてしまった人に思いをはせたご議論をお願いしたいと思います。

 

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