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生活保護基準の引き下げで貧困連鎖と賃下げに

生活保護基準の引き下げで貧困連鎖と賃下げに

 

生活保護基準の引き下げの話が出始めたのは2013年1月。

あれよあれよという間に、今年の8月から引き下げる話になっています。

一方で、就学援助等への影響が出ないように配慮、住民税非課税限度額やそれに連動する制度の議論は後ほどと言われており、参院選への配慮とも伝えられています。

さて、ニュース等ではさらっとしか伝えられていません。というよりも、そんな短い時間では、本当にどんな影響があるのか、伝えきれないのです。

 

おさらいしておきましょう。

芸能人の親族の生活保護を受けていることが伝えられたのは、昨年4月でした。すぐさま自民党が動き出しました。このことが、一個人の道義的問題を社会問題にしました。「制度の改善が必要」との主張です。

思うに、ケースワーカーの人数不足や不安定な雇用環境から、「その他世帯」の自立助長がおろそかにされていることは事実です。しかし、そのような環境を改善せずに、ケースワーカーへの目標強化、生活保護利用者を悪質な労働環境へ放り込むことはよい結果をもたらしません。つまり、政治家がやるべきことをやらないで、責任を放り投げているのです。政治家の責任放棄です。

自民党は、その後生活保護の「生活扶助費」10%削減を公約に掲げました。

小選挙区制の結果、衆院選で自民党の議席が増加。自民党は、公明党と共に政権与党に返り咲きました。

さっそく、生活扶助費の削減に手を付けますが、現実には10%削減はできないことが理解できたのでしょう。生活保護基準部会では、貧困の連鎖を食い止める必要があるという議論が続いていました。そこに、厚労省が突然持ち出した「デフレ論」。最終的に、委員から非難の声があるにもかかわらず、この「デフレ論」を最大の看板にして、厚労大臣が削減を決めました。

方法としては、今年8月から段階的に削減していく方法を採ることになりました。それが、3年間での740億円減額です。通常、年度替わりの4月からのはずですが、8月というのが参院選の後なのです。

さて、ここまで来る中で、生活保護基準は、「ナショナルミニマム」としての機能があることが指摘され始めました。つまり、生活保護基準は、生活保護だけでなく、他のあらゆる制度の基準、物差しです。

真っ先に指摘されたのは、就学援助です。小中学生が標準的な所得の世帯以下ならば学用品費や給食費などを支給される制度です。自治体がまじめに広報すれば、小中学生の3人に1人から、2人に1人が受けられる制度です。

子どもの学力や進学率は、親の所得に比例しています。

就学援助を受けられるかどうかは、生活保護基準の何倍の所得までと決まっています。その基準が下がれば、受けられるか受けられないかのぎりぎりの世帯がはみ出してしまいます。国は、影響が出ないように配慮すると言っていますが、運用そのものは自治体の権限です。しかも、そのための予算は、いわゆる紐付きではありません。国が自治体にたくさんお金を配っても、子どもに使うか道路に使うかは、自治体の判断次第です。道路だとわかりやすすぎますが、たとえば、「小学校の耐震工事が進んでいないので、そちらに使います。子どもたち全員にとってプラスですし、災害時は避難所にもなります」と言われたら、どうするのでしょうか。

次に、住民税の所得割の非課税限度額です。住民税には、均等割(世帯あたりと人数あたり)と所得割があります。その所得割部分で課税しませんよという金額は、生活保護基準を参照します。

住民税は、前年の所得に対してかかるので、今年生活保護基準が下がっても、影響が出るのは来年。ですが、来年には必ず影響が出ます。政府は「今後議論」というだけ。影響するのかしないのかは言っていません。

影響しないのも、それまたおかしな話です。生活保護を利用する人の生活保護基準と、生活保護以外の制度を利用する人の生活保護基準が異なるというダブルスタンダードが生じます。いったい、何のための生活保護基準なのでしょうか。

ところで、生活保護基準が贅沢だという声があります。本当でしょうか。

国が出しているデータは、そもそもおかしいのです。これを見てください。新潟市の一人世帯の「標準生計費」です:

2009年 119,280円

2010年 129,500円

2011年 117,500円

2012年 143,620円

上下はともかくとして、これが新潟市内で一人暮らしをしている人の標準的な1ヶ月の生活費だというのです。本当でしょうか。

間取りによりますが、4万円台が最低です。通常、5万円と見た方がよいでしょう。ここから、食費、公共料金、通信費を差し引いてみてください。さらに、自家用車です。車検代、駐車場代と冬用のタイヤもお忘れなく。どうでしょうか。

このようなおかしな数字が、どこでもかしこでも一人歩きしていきます。

さて、最後に、最低賃金です。

最低賃金は労使代表の議論によって決まるのですが、もちろん、生活保護基準や標準生計費から影響を受けます。

すでにアップしましたが、こちらの図です。

生活保護と最低賃金

 

最低賃金法9条には、

3  前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。

とあります。生活保護基準が下がれば、最低賃金の引き上げにブレーキがかかるでしょう。最低賃金を基準にして、労働者の賃金水準は決まっていますから、すべての労働者の賃金水準があがらないことになります。

その上、「生活保護利用者の就労強化、中間的就労」が登場します。あなたよりも安く働く生活保護利用者が、労働市場に登場するのです。当然、賃金の下落圧力になります。

経団連は、生活保護について直接言及しませんが、「社会保障の一層の効率化・重点化の推進と自助・共助・公助の役割分担の明確化」を要求しています。賃金の下落につながる生活保護基準の引き下げについては、大いに歓迎していることでしょう。

このような生活保護基準の引き下げによる影響は、ただちに出るものではありません。たぶん、5年以上かかるでしょう。しかし、気がついたときには、もう手遅れなのです。

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